the end of an era

You are free to be who you are.

『夕暮れの昼寝』第十四寝―アイドルとは何者か―

 月日の流れは速いもので、推しが芸能活動を再開してから、もう1年以上が過ぎた。今月の『ダ・ヴィンチ』に、どうしても触れたくなることが書かれていたので、久々に筆を走らせている。

 

 2年前の7月30日、アイドルという職業に対する苦しさと、推しにはどこか違う世界で幸せに生きていてほしいという希望を抱いて、幕張メッセを後にした。そのとき推しから伝えられたことを受け取れていたのか、いま、その答え合わせをされたような気分だった。

 正直、そのときは芸能界にはもう戻ってこないと、ほぼ確信していた。それこそ、卒業後、表舞台から去る、その形自体には、たくさん前例がある。山口百恵はともかく、橋本奈々未嗣永桃子の去り方を、当然推しが知らないはずもない。だからこそ、伝説のアイドルとして、その存在を記録と記憶に残しておきたかった。

 

 そういえば、推しが復帰するほんの数日前、橋本奈々未が美容室のSNSで顔を出したことがあった。推しもこんなふうに、どこかで生きていることさえ確認できればなぁ、と思っていたような気がする。それこそ、「約束の彼の地」に来ないことはないと思っていたし、その関係者席を見るためだけに高倍率の双眼鏡を買いたいと思ったことは幾度となくある。

 その数日後、オフィシャルサイトのドメインが取得されたという話が持ち上がった。正直、推しが芸能界で生きていくとして、どういう仕事をするのか、どんな仕事なら楽しくやっていくのか、分からなかったところはあった。ただ、7月7日深夜、もしかしたらと見ていたセブンルールに出ていた推しを見た瞬間に、そんな考えは吹き飛んでしまった。

 

 それから1年、推しはラジオからエッセイ、TIFのチェアマンに至るまで、様々な仕事をこなしている。もちろん、筆者もいち社会人だから、全てが全て楽しい仕事であってほしい、なんて言うつもりはないが、推しが楽しんでいる姿を見るのが、筆者にとっての最高の幸せであることは言うまでもない。

 推しの職業は何だ、と聞かれたら「タレント」とか「元アイドル」とか答えるのだろうと思う。でも、「職業」という属性に、価値があるのかと疑問に思う。長濱ねるは長濱ねるであって、他の何者でもない。それでいいじゃないか。

 『ここから』という推しの写真集に、秋元康が付けた帯の文章を思い出す。「長濱ねるは、謙虚だ。いつだって、自分にはまだ何もないと言う。だから、”ここから”が楽しみだ。」その通りでいいと思うし、その通りであってほしい。どこかで自分自身を見つけて、その道に進んでいくなら、それを応援したい。

 そうやって、「3度目の人生を変える日」が訪れたとしても、あまつさえ、また推しを見ることができなくなったとしても、それでいいという思いはあるし、いつかそういう日が来るのだろうという覚悟はある。とにかく、推しがファンのために生きていくのは、また推しの心が壊れてしまうような気がするし、推しには自分自身のために生きてほしい。推しがどんな選択をしようと、推しを応援しつづける、それくらいの気概で推しというのは選ぶものだと思っている。

 

 かつて、筆者が初めて推した「アイドル」に、こんなことを言った覚えがある。

  「自分が人を幸せにしていたことに自信を持ってほしい」

 まさにその通りのことを伝えたい、と思ってしまう。どんな生き方を選択したとしても、推しがファンを、そして周りの人を幸せにしていた事実は変わらない。そんな事実が推しの生きていく糧になるのなら、これ以上嬉しいことはない。